子宮頸がんワクチンの疑問に答えます
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)が小学校6年生~高校1年生の女の子に対して定期接種になっていて、公費(無料)で接種を受けられることをご存じですか?
実は2013年から定期接種となっていていたのですが、一時期、接種後の体の痛みなどを訴えるケースが出たため、その後積極的に勧奨しない(お勧めしない)という、あいまいな立場のワクチンになっていました。
その後の検討で、接種と無関係に原因不明の痛みを訴えるケースが一定数あることから、ワクチンと副反応の因果関係は否定されました。しかし、一度信頼を失ったHPVワクチンの接種は進まないままになっていました。
世界に目を向けると、HPVワクチンは世界100か国以上で導入されています。また、昨年発表されたカロリンスカ研究所(ノーベル賞で有名ですね)の論文では、接種を行った女性の場合、子宮頸がん発症のリスクが63%低下したことが報告されています。日本ではワクチンをうたないまま10年近くが経過したため、この間に先進国では子宮頸がんの罹患率、死亡率ともに減っているのに、日本では増加しているという結果もでています。
子宮頸がんの罹患率は20代後半にピークになり、40歳前後までが高いことが知られています。結婚、妊娠、出産、子育てをする年齢の女性に多いがんなのです。しかし、ワクチンによって予防できる数少ないがんであることを強調しておきたいと思います。
HPVワクチン接種後の副反応として重篤な副反応が起こる割合は低く、厚生労働省のデータでは2,000人のうち1人という割合です。ただ、副反応で苦しんでいる方がいることや、リスクがゼロではないことも事実です。しかし、ワクチンを打って副反応が起きるリスクよりも、打つことで命に関わる病気を予防できるメリットの方がはるかに大きいといえます。
産婦人科学会も小児科学会も、科学的な根拠に基づいて接種をおすすめしていますが、それでも接種に関する心配があるようでしたら、遠慮なくご相談いただくのがよいと思います。