便秘について その2
さて、今回は小児の便秘の2回目です。
便秘の起きやすい時期と、排便・便秘のメカニズム、治療の原則について書きます。
まず便秘の起きやすい時期からです。
生後すぐの新生児期からの便秘
このような時期から起きるものは、むしろ外科的な治療が必要な重篤な疾患である可能性が高いです。
乳児期における食事の移行期
この時期の赤ちゃんは、まだ自分の意志でおしりを緩めて、いきんで排便するという一連の協調した運動ができません。また、離乳食により便が次第に“形”として固まってくるため、自力で排便しにくくなることがあります。なので、この時期は単純に便を柔らかくすることで便秘が改善することが多いようです。
幼児におけるトイレットトレーニング期
この時期になるとは、自分の意志でおしりを緩めて、いきんで排便するというトイレトレーニングが出来るようになってきています。しかし、逆に言うと、自分の意志で排便を我慢することもできるようになっています。このため、何らかの原因で排便が苦痛であるという経験をすると、それ以降に“うんちをするのが怖い”という考えに支配されるようになってしまいます。このような場合は、“うんちをするのが怖い”という思考を変えてあげるようにしないといけません。
学童における通学の開始期
この時期は、幼児期から大きくライフスタイルが変化します。排泄に関して言うと、“自由にトイレに行けない”ような生活に変わっていくわけです。このため、朝の排便の時間が十分とれない、便意を催しても、授業中は我慢しないといけない、などの問題が出てきます。また男の子の場合、排便への羞恥心などもでてくるようになります。この時期には個々の問題について、解決をはかる必要が出てきます。
ここで排便のメカニズムについて説明します。
大腸で次第に形ができた便が直腸をおしひろげると、脳に便がおりてきたという情報が伝わります。そうすると、排便が可能になる時期までは、自分で外肛門括約筋をしめて便を我慢します。そのあとトイレに行くと、括約筋を緩めて、おなかに力を入れて排便します。これとは別に食事をした時は、胃の中に食事が入ったという刺激で胃結腸反射というものが起きて、腸がぐるぐる動いて排便につながります。
便秘の子の場合、慢性的に直腸に便がたまっており、便意を感じにくくなっています。便秘が進むと、食欲も落ちてくるようになり、胃結腸反射による腸のぜん動運動も落ちてきます。そうして便秘が成立してしまいます。
また、一旦便秘になると、
① 排便時に痛い→②排便我慢→③便塞栓→④水分が抜けて硬くなる
この①~④の悪循環におちいってしまいます。また、この時は体の便意を感じるセンサーや反射も鈍っていくので、さらに便秘はひどくなっていきます。
便秘の治療においては、まず硬くつまっている便(便塞栓)を除去して便が通りやすくなるようにしなければいけません。便秘の悪循環を断つためにもこれは重要なことです。ただし、一旦固くなってたまっている便を内服薬で柔らかくすることは困難です。そこでまず、浣腸などで便塞栓を除去することが最初に必要なことです。
そのあとから、規則正しい生活習慣、バランスの取れた食習慣、排便習慣の確立を身に着けるようにしていきます。内服薬はこの習慣が確立するまでの補助です。内服薬だけで生活改善なく便秘が治っていくことは困難なのです。
今日はここまで。お子さんやお母さんの気持ちや、治療については次回書きます。