食物アレルギーの予防について 食品の早期摂取は危険?安全?
前回のブログで、乳児期早期から少量の食品の摂取を始めた方が、食物アレルギーを起こしにくいという記事を書きました。
今回はその根拠と、実際の離乳食での食べさせ方について書きます。
さて、食品をいつから食べさせるのかという考え方の歴史的な変遷ですが・・、
2000年のアメリカ小児科学会では、アトピー性皮膚炎があったり家族歴がはっきりしているアレルギーのハイリスク児の場合、食物アレルギーが心配なら、摂取の開始は遅らせましょうという考え方を推奨していました。
ところが、2015年にイギリスで行われたピーナツアレルギーの発症予防に関する検討で、アトピー性皮膚炎や卵アレルギーのある乳児でも、早く食べ出した方がアレルギーを予防できるという研究結果が発表されました。心配して食べないよりも、積極的に食べた方がいいですよという、アメリカの推奨とは正反対の結果ですね。
ただしこの研究の中で、アレルギーのリスクが比較的高い乳児では、最初の摂取でアレルギー症状が出る場合があることもわかりました。これを受けて、その後、食べ始める量が多いとアレルギーを起こすのではないか?もっと少ない量で食べたら予防できるのではないのか?という検討が行われました。
日本で行われたアトピーの乳児を対象にした検討で、生後6か月からほんの少しの加熱卵粉末を摂取し始め、次第に増量して摂取を続けた場合、摂取をしない場合に比べて、卵アレルギーの発症率が80%も低かったという結果がでました。
これは少量を食べ続けて、食物アレルギーを予防することが出来た世界初の研究です。
これを受けて、日本小児アレルギー学会からも、2017年6月にまず医療関係者向けに鶏卵アレルギーの発症予防に関する提言が発表されました。その後、その内容を一般の方へ説明する解説が10月に発表されています
69f6d7cc633708191f30fdad9b699c96.pdf (jspaci.jp)
その要旨は、アトピー性皮膚炎があったら、つるつるに治して、生後6か月から卵を食べ始めましょうということになります。
2019年3月の厚労省、授乳離乳の支援ガイドにも生後5~6か月から卵黄を食べ始めるように記載されるようになりましたが、これには細かい食べさせ方は書いてありません。
そこで、離乳食での開始のやり方を説明します。
日本小児アレルギー学会では固ゆでの卵黄1/3個(全卵0.2g換算)から、海外の提言では全卵をティースプーン1/4杯程度から食べることを推奨しています。
今回の講演では、卵黄は自由に食べていいでしょう、卵白については固ゆで米粒1個大位から1粒ずつ増やせばよい(5~10粒で0.2g)のでは?というアドバイスがありました。
わたしも日常の診療の場面では、「卵白はまだ怖くて試せていません」という声をよく聞く場合があります。これからは、このような具体的な例を挙げて説明すれば、保護者の不安を軽くし、一歩先へ踏み出していただけるサポートが出来そうだと感じました。
今回はここまでです。
次回はミルクその他の食品について書きます。